難病法の対象となる「難病」は、多種多様な疾患です
労働力の中心となる年齢層「生産年齢人口」(15~64歳)において患者数が多い難病には、以下のような疾患があります。
· 消化器系疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病等)
· 自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎/多発性筋炎等)
· 神経・筋疾患(パーキンソン病、もやもや病、多発性硬化症/視神経脊髄炎、重症筋無力症等)
一方で、患者数の少ない難病も、以下のように多くの種類が存在します。 · 血液系(原発性免疫不全症候群等)
· 内分泌系(下垂体前葉機能低下症等)
· 視覚系(網膜色素変性症等) · 循環器系、呼吸器系、皮膚・結合組織系(神経線維腫症等)
· 骨・関節系(後縦靭帯骨化症等)
· 腎・泌尿器系(多発性嚢胞腎等)
指定難病とは
難病は治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とすることで大きな経済的負担を強います。国が「難病の患者に対する医療等に関する法律」に定められる基準に基づいて医療費助成制度の対象としている難病を「指定難病」と呼びます。
指定難病は、難病のうち、以下の要件を全て満たすものです。
· 患者数が本邦において一定の人数(人口の0.1%程度)*に達しないこと
· 客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること
「指定難病」に認定されている病気の種類
2018年4月1日より、指定難病には331疾患が指定されています。各疾患の概要や診断基準は、以下に挙げる厚生労働省や難病情報センターのサイトから見ることができます。
参考:厚生労働省「指定難病」
参考:難病情報センター「病気の解説・診断基準・臨床調査個人票の一覧 五十音別索引」
指定難病の対象となる疾患は、今後も継続的に選定が行われる予定です。これらのサイトでは、最新情報を随時確認することができます。
「難病の患者に対する医療等に関する法律」は「指定難病」のある人のうち、重症者や継続的医療が必要な場合に医療費助成制度の対象とすることを定めています。
難病医療費助成制度の対象となるケース
指定難病と診断され、病状の程度が「重症度分類等」という基準において一定の程度以上であったり、継続的な高額医療費の負担のある場合、医療費助成制度の対象となります。
これは、難病のある人が都道府県の窓口へ申請し、審査を経て認定を受ける必要があります。指定難病の診断基準と重症度分類等は、個々の疾患ごとに設定されています。
対象者の要件・指定難病(※)にかかっており、その病状の程度が厚生労働大臣が定める程度であること。※①発病の機構が明らかでないこと、②治療方法が確立していないこと、③希少な疾病であること、④長期の療養を必要とすること、⑤患者数が本邦において一定の人数に達しないこと、⑥客観的な診断基準が確立していること、の全ての要件を満たすものとして、厚生労働大臣が定めるもの。・指定難病にかかっているが、その病状の程度が厚生労働大臣が定める程度ではない者で、申請月以前の12ヶ月以内に、その治療に要した医療費総額が33,330円を超える月が3月以上あること。
難病医療費助成制度の内容
国民健康保険や健康保険組合などの加入者は、医療機関の窓口で医療費の3割を自己負担します。一方、難病医療費助成の認定を受けた患者の自己負担は、2割を上限として、「医療費助成における自己負担上限額(月額)」が以下の表の通り定められています。
画像引用:難病情報センター「医療費助成における自己負担上限額(月額)」(2018年8月現在)
「自己負担上限額(月額)」は、世帯の所得額に準じて定められています。また、その月に受診した複数の医療機関での自己負担額をすべて合算した額に適用されます。外来受診や入院も区別されません。
患者の一部負担金(2割に相当する額)が「自己負担上限額(月額)」を超える場合は、医療機関窓口での支払いは、自己負担上限額(月額)となります。
つまり、患者の自己負担額は、医療費の2割相当額と「自己負担上限額(月額)」で定められた額の、どちらか低い方の額になります。継続的な医療費負担の大きい次の2つの場合は、さらに自己負担額は軽減されます。
1. 高額かつ長期(高額な医療費の負担が長期にわたる場合)
所得区分が「一般所得」または「上位所得」であり、高額な治療を長期にわたり受ける必要のある人に対しては、さらに低い自己負担上限額(月額)が設定されています。このケースを「高額かつ長期」と呼びます。
「高額かつ長期」の認定対象となるのは、所得区分が「一般所得Ⅰ(市町村民税 7.1万円未満 《約160万円~約370万円》)」以上であって、指定難病の月ごとの医療費総額が5万円を超える月が、申請日の月以前の12か月の中で6回以上ある場合です。
2. 人工呼吸器などの、生命維持に必要な装置を装着している場合
人工呼吸器など、生命の維持に必要な装置を装着している人については、所得区分にかかわらず、自己負担上限額(月額)は1,000円です。
※軽症高額該当(症状が軽症でも、医療費が高額にのぼる場合)
難病患者は継続的な医療によって軽症を維持している人も多くいます。そのような状況に対応して、難病医療費助成の支給認定の条件である「重症度分類」に満たない軽症である場合も、高額な治療を継続して受ける必要のある人は、助成を受けることができます。
このケースは「軽症高額該当」と呼ばれます。 「軽症高額該当」の対象となるのは、ひと月の医療費総額が33,330円を超える月が年間3か月以上ある場合です。
指定難病の医療費助成を受けるためには、以下の手順に沿って申請し、支給認定を受ける必要があります。認定を受けると「医療受給者証」が交付されます。
都道府県の窓口で必要書類を入手
まず、都道府県の窓口で必要書類を入手します。多くの場合は、市の保健所や健康福祉事務所の「保健予防課」や「健康増進課」などの窓口が担当窓口となっています。
「難病指定医」を受診
臨床調査個人票を持参し、難病の診断や治療の経験が豊富な「難病指定医」を受診します。難病指定医が在籍する医療機関は、以下のリンク先で検索することができます。
臨床調査個人票と、その他必要書類を都道府県に提出
指定難病医により記入済の臨床調査個人票とその他必要書類を、都道府県窓口に提出します。
都道府県から指定難病医療受給者証が送付される
審査ののち、認定が降りた場合は「医療受給者証」が自宅住所へ送付されます。申請から交付までには、約3か月を要します。
難病は多くの身体的、精神的な障害の原因疾患であるため、障害者手帳制度の認定を受けることができる場合が多くあります。さらに、障害者総合支援法では障害者手帳制度の対象とならない場合でも、難病患者を福祉支援の対象とすることを定めています。
福祉制度上の「難病」
障害者総合支援法における「難病」は、医療費助成の対象である指定難病よりも広く、2018年4月1日時点では359疾患になっています。具体的な疾患名は、以下のリンク先で確認することができます。
参考:厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾患(難病等)の見直しについて」
障害者手帳による支援
難病のある人には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を取得している人もいます。以下の難病は身体障害の代表的な原因疾患であり身体障害者手帳の取得実績が多くなっています。また、もやもや病では脳卒中の症状で精神障害者保健福祉手帳の取得が多くなっています。
難病は症状が変動するため固定した後遺症による障害とは異なりますが、特に症状が重い時の状態と障害認定基準を踏まえ、医師の診断によって障害者手帳の取得ができる場合があります。
<亜急性硬化性全脳炎、脊髄性筋萎縮症、副腎白質ジストロフィー、網膜色素変性症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、多系統萎縮症 特発性大腿骨頭壊死症、悪性関節リウマチ、広範脊柱管狭窄症、肺動脈性肺高血圧症>
身体障害者手帳は、1級から6級の等級が定められています。身体障害者手帳を取得すると、等級に応じて以下のような支援を受けることができます。
· 医療費や補装具の費用の助成
· 所得税・住民税・自動車税の減免や控除
· 公共交通機関運賃やNHK受信料・携帯電話利用料金、美術館や動物園などの公共施設の入場料、上下水道料金の割引
· 公営住宅への優先入居
· 企業の障害者雇用義務の対象としての採用
· 条件を満たせば、障害年金の受給が可能
障害年金は、肢体障害を始め、腎臓・心臓などの内臓疾患からうつ病・統合失調症・知的障害などの精神疾患のほか難病など、その対象となる傷病は多岐にわたっています。
障害認定基準の「その他の疾患」による障害の認定要領では難病に関してこのように記載されています。
「難病については、・・・、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分に考慮して総合的に認定するものとする。尚、診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。」
つまり、「難病の対象疾患だから、認定されるのではなく、病状の経過、日常生活の状況や治療効果を総合的に考慮して認定」されるというものです。
当オフイスでも、脊髄小脳変性症、筋ジストロフィー、パーキンソン病、若年性認知症などの方から申請代行のご依頼をいただき、サポートをさせていただきました。
40歳以上は障害者も公的介護保険の被保険者に
40歳以上の人は、障害を持った人も原則、公的介護保険の被保険者になります。したがって申請により「要支援・要介護」と認定された人は公的介護保険のサービスを利用することができます。ただし、40歳以上65歳未満の人は、国が「加齢による心身の変化によって生じる、要介護状態につながる病気」として定める以下の「16種類の特定疾病」による場合のみ利用することができます。
<40歳以上65歳未満の人に公的介護保険が適用される16種類の特定疾病>
○がん(自宅等で療養中のがん末期) ○筋萎縮性側索硬化症(ALS) ○後縦靭帯骨化症 ○骨折を伴う骨粗しょう症
○多系統萎縮症 ○初老期における認知症 ○脊髄小脳変性症 ○脊柱管狭窄症 ○早老症 ○糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 ○脳血管疾患 ○進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病 ○閉塞性動脈硬化症 ○関節リウマチ ○慢性閉塞性肺疾患 ○両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
障害に応じた独自のケアなど公的介護保険にはないサービスを利用する場合には、障害者施策のサービスを併用することもできます。また、障害者施設(更正施設、授産施設、養護施設など)に入所または通所しながら公的介護保険サービスを利用することもできます。ただし、入所している施設によっては公的介護保険の被保険者にはなれない場合があります。